タイの風俗は本番行為をサービスに含むのが普通となっている。したがって、日本の基準で言えば買春に相当する。タイ観光客が訪れる主要なゴーゴーバーでの連れ出しはもちろんのこと、マッサージでのお誘いも全てそうで、日本のように店が表面上でも禁止している風俗店はまず無い。
本番行為が違法な国は多く、警察に拘束されるリスクがあることを知っている人は、タイでは夜遊びが安全にできるのか不安に思っているだろう。
そこで今回はタイにおける風俗、夜遊びを
▶ タイにおける売春・買春の法律的な部分から実情
から
▶ タイでの児童買春について
▶ 買春または児童買春で捕まった日本人
▶ 買春の合法化と刑罰化の問題
まで法律面だけでなく、実務上どうなっているかまで詳しく解説していきたいと思う。
タイにおける売春・買春の法律的な部分から実情
上でも述べたが、タイの夜遊びは日本でいうところの「売春の要件」を満たすのが普通だ。では、タイで買春をするとどうなるか?
成人女性を買春することに関しては、1996年売春防止及び取締法(タイ)で禁止されている。ただし、刑事処罰はない。買春行為そのものでは法律では罰せられないのだ。タイで買春は合法という人がいるがそれは誤りで、正確には刑事処罰が無い、罰せられないというだけである。
斡旋に関しては1年から10年の懲役刑がある。しかし、警察もこうした風俗店から賄賂を貰うことで営業をほぼ容認(黙認)している。
タイの夜遊びにおける「売春」の扱い
タイの夜遊びとして有名なのはゴーゴーバーやマッサージ・パーラーがあげられる。ゴーゴーバーはステージ上で踊っている女の子はで気に入った子がいれば席へ呼び、自身の宿泊するホテルへとお持ち帰りができる。マッサージ・パーラーは日本で言えばソープランドのようなサービスを受けれる風俗店だ。
いずれも、日本と違うのは本番行為が普通にサービスに含まれているという点である。風俗のサービスで本番行為を含むと、買春行為とされるため、日本でも罰則は無いが法律上は禁止されている。タイでもこれは同様である。
しかし、タイでは本番行為を理由に、客側が捕まったことはない。未成年者や不法滞在者(ラオスやミャンマー人が多い)を働かせていたり、禁酒日(仏教上の理由でお酒を売ってはいけない日)に店を営業したことで警察の指導を受けたり、営業停止を受けた店は何軒かある。
また、タイではこういった風俗店以外でもフリーの娼婦が数多おり、店に所属しない形、個人で買春行為をしてお金を稼いでいる。日本では売春の温床となり未成年をはじめとした高校生なども多く出入りすることから、出会い喫茶の摘発は頻繁に行われている。しかし、タイではこうした出会い喫茶が堂々と営業され繁盛している。警察も駐在しているので、一定の額の賄賂を払っているだろう。
有名な出会い喫茶として、バンコクにテーメーカフェと呼ばれる出会いカフェがある。ここも警察に摘発されたことはもちろん、ここで出会った女性とホテルへ行ったことで捕まったという人は自分の知る限り一度も無い。
タイにはこうした出会い喫茶の他、ディスコにおいても売春行為を目的に女性を配置しているところが数多くあり、現地タイ人もこれを利用している。こうした売春行為を容認している店は、自由恋愛における性行為との区別が付かないことから、タイ社会においては違法とされていない。
実際、タイ警察も「売春は存在しない。外国人との性交は自由恋愛」との見解を出している(www.bangkokpost.comより)。もちろん、ゴーゴーバーやこうした出会喫茶での性交も自由恋愛に含んでいるだろう。タイでは司法ではなく、現状は行政(警察)の解釈が優先されている。逮捕の権力を持つ行政がこの判断を下しているため、ゴーゴーバー含む外国人向け風俗は「買春」には当てはまらない。
ただ、立ちんぼと呼ばれる道端や路上で声をかけてくる売春婦に関しては、タイの警察は定期的に逮捕し罰金刑を課している。これにかんしては不審者なども一緒に逮捕されているので、建前上「風紀の乱れを防止し治安の悪化を防ぐことにある」とされる。しかし、実際は風俗店が警察への賄賂を払っているのに対して、こうした個人で活動するフリーの娼婦達は警察への賄賂を払っていないことが大きな理由だろう。事実上の賄賂と言っても良いかもしれない。
バンコクのスクンビット通りだけでなく、タイの人気観光地・パタヤなどでもこうした売春婦達を含む不審者が定期的に警察に拘束され、100バーツ(日本円で330円程度)程度の罰金を科して開放されている。
パタヤで拘束されたオカマを含む売春婦達(http://pattayaone.net/pattaya-news/179320/undesirables-rounded-up-by-police-on-pattaya-beachより)。風俗店との公平性を保つため、賄賂の代わりに罰金を与えていると言えるだろう。
ただし、買春、売春の「斡旋」に関しては、法律の解釈を含んだ実情としてかなり異なっている。
法律上は日本とほぼ同じと言える。加えて、タイでは毎年買春合法化の動きがある。合法化の利点は
1.客の暴行や意思に反する人身売買などを警察に訴えられる(風俗業に従事している人にとっての利点)
2.売春を合法化することにより、売春行為に課税ができる(国の利点)
3.警察への賄賂が不要となる(風俗店側の利点)
上記のようなものがあるが、➂の点から売春合法化には警察が反対しているだろう。先進国に比べて現地警察官は給与水準が低く、こうした観光業から間接的に流れて来る賄賂によって懐が潤っている現状もあるからだ。
タイでの児童買春について
タイでも国際社会の圧力によって、未成年の買春(児童買春)を行うことは難しくなった。近年でも観光客の多いナナプラザやのソイカウボーイのゴーゴーバーで未成年を働かせていた店は営業停止になっている。未成年買春を目的とした旅行者も簡単には利用出来なくなっている。
未成年をタイで買春した場合、買春者は日本の法律でも罰せられる。児童買春・児童ポルノ禁止法 第十条の規定により、国外犯として処罰がなされるのだ。児童買春はタイでも法律上禁止され、こちらは成人の買春と違い罰則もある。法律上の罰則は日本よりも厳しくなっている。
まずは、15歳以上18歳未満の相手を買春した場合
売春防止及び取締法(タイ)
第8条 自己又は他人の性欲を満足させる目的で、売春施設において15歳以上18歳未満の者と性交し又はそれらのものに対しその他の行為を行なった者は、相手方の同意の有無に関わらず、1年以上3年以下の拘禁及び2万バーツ以上6万バーツ以下の罰金に処する。
15歳未満にはタイの刑法が適用される。
刑法第277条(タイ)
同意の有無に関わらず、妻ではない15歳未満の女子に強姦行為を行なう者は4年以上20年以下の拘束および8000バーツ以上4万バーツ以下の罰金に処する。13歳未満の少女に同上の罪を犯した加害者は7年以上20年以下の拘禁および1万4000バーツ以上4万バーツ以下の罰金に処する。
「同意の有無に関わらず」、この点で買春の場合も含まれることになる。13歳未満は7年以上20年以下の拘禁で、実際に10年以上刑務所に入る人も少なくない。
買春または児童買春で捕まった日本人
タイだけでなくその他東南アジアにおいても、現地で成人女性の買春行為で捕まった日本人というのは皆無だ。あるのは児童買春での逮捕である。
タイで12歳少年を買春 66歳日本人男を2010年11月に逮捕。
http://thai.news-agency.jp/articles/article/5328
児童買春容疑で日本人に実刑判決(カンボジア)13歳の少女を10ドル(1000円)で買ったとして41歳日本人男性を2009年8月に逮捕。
http://www.kamonohashi-project.net/report/2010/11/post_258.html
カンボジアで32歳日本人男性逮捕、少年の裸写真を撮影
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2508733/3240086
児童買春にかんしては各国真剣に取り組んでる。疑いをかけられる行為自体も避けた方が良いだろう。なお、お笑い芸人の長井秀和もフィリピンで少女(17歳)を買春したとされ、報道に上がったことがあった(実際は女性側の計画的な詐欺事件だったとされる)。
カンボジアは児童買春の数が多いことから逮捕されるとほぼ実刑になり、実名や身分証明証の顔写真まで晒される。
ちなみに、東南アジアで児童買春するのは日本人がほとんどと言う人がいる。しかし、国別で客観的に比較した統計は見つからなかった。統計を発表している児童人権団体の資料を見ると、近年でよく目につく国籍はアメリカ人、ドイツ人だった。アジア人では日本の他、韓国、中国の名前もあった(中国に関しては中国国内の買春データだと思われる)。日本人に特別児童買春者が多いわけではないだろう。
児童買春を防ぐ取り組み
タイのホテルに関しては、ホテルに女性を連れ込む際に女性のIDを預かるところが多い。これは年齢の確認はもちろん、身分の証明されていない人を泊めることで生じる犯罪を抑止する効果もある。タイでは連れ込んだ女性が客の財布からこっそりとお金を抜いたり、男性に強めの睡眠薬を飲ませて傷害または故意ではなく殺害してしまうといった事件が何度かあった。したがって、ホテルも連れ込む女性のID申告を積極的に宿泊者にはすすめている。
また、ホテルによっては18歳以上20歳未満の女性も泊めることを拒否するケースがある。タイの法律上は18歳未満が児童買春となるが、民間レベルでは20歳以上の売春のみを認めるといった考えがあり、自主的に方針を決めているためだとされる。18、19歳女性の買春に関しては刑事罰といった法律上の決まりはないものの、タイ社会においては意見が分かれている。刑事罰の対象にならなくとも、10代の少年少女に関しては、規制をかけるのは当然かもしれない。
ただ、高級ホテルでは警察との関係が良好なためか、連れ込む女性のIDチェックがなされていない。アソーク周辺では高級ホテルAも受付と客室に続くエレベーターが離れているため、IDチェックはなされなかった。中級ホテルBでも受付を通らずに、部屋へ行けるため女性のIDチェックが強制ではなくなっている。
10代の愛人を持つ人はこうしたIDがチェックされないホテルに宿泊している。これは日本人に限らず、欧米人もそうである。
IDのチェックやジョイナーフィーについて詳しくは下記記事を参考に。
買春の合法化と刑罰化の問題
成人女性を買春することを今のグレー状態から刑罰化するとどうなるだろうか?これに関してはタイではもちろんのこと、日本においても社会的不安を引き起こす可能性が高い。
まず、売春・買春を取り締まると、中国のようにマフィアの巨大ビジネスとして成長する可能性が高い。国が禁止しても、性欲はなくなるわけではなく、結局はマフィアのしのぎになる。当たり前の話だが、こうしたマフィアのしのぎは国が管理できない。したがって、今の風俗業も買春違法化に伴い、逆にそれを助長させる可能性が高いのだ。また、風俗業からの莫大な税収も失うことになる。違法ドラッグ同様、素人ではなくマフィアの商いになり、マフィアの巨大化、税収の大幅な減少を起こしてしまうだろう。社会的な悪影響が多く出てしまう可能性は否定できないどころか、十二分にあり得るのだ。
また、自由恋愛との兼ね合いも説明できなくなる。買春が違法で刑罰の対象(犯罪)ということになれば、性交自体がグレーになる可能性も高く、男女が2人でいる時も正当な行為として、職務質問されるようなことが日常茶飯事になるはずだ。警察官の権限も増え、プライバシーの問題も大いに生じる可能性が高い。実際に、ベトナム、ミャンマー、中国では買春は違法(刑罰対象)で、これに辻褄を合わせるために未婚の成人同士の性交も禁止している。
売春・買春の刑罰化や風俗業の更なる規制を訴えている人も多い。しかし、果たしてこうした世の中を望む人はどのぐらいいるだろうか?現実化した場合の悪影響もきちんと考えなければならない。確かに、買春を合法化すれば援助交際などが活発になってしまい日本でも社会的な影響が出てくると思う。したがって、合法化にも慎重にならざるを得ない現状があるのもわかる。
現状合法となっている風俗との兼ね合いから、ヨーロッパの赤線地区(売春が合法なエリア)のように警察の管理が行き渡る場所での売春も認めていいような気もしなくはないと個人的には思うのである。
個人間の売春が行われる場所として、タイで最も有名なのはテーメーカフェだろう。テーメーカフェに興味のある人は下記記事を参考に。